仕事が終わって朝視はうちへ向かっていた。悲しさは胸に深く収まっている。にしても、「every time you…」という歌を地下鉄を出て、流して歩き始めると、一日中息を殺していたような感覚がした。少し彩った淡く明るい雲の少ない空に穏やかで鮮やかな半月が光っていた。朝視は深く息を吸って、どこからかできた力で勢いよく歩いていることに気がついた。
このような月を見ながらネイサンは眠りについた。黒い魔法使いはほとんどそうだろう。白い魔法使いより強いあかしとは限らない。だが、自然により近いところは確かだと思う。
今このように半月の光の中その面に顔を向けながら、朝視は自然に引かれているような気分になった。その月に惹かれてる。次の歌に「森」を流した。心底に埋まれた悲しみがどんどん湧き上がっていく。思い出にならない純粋な気持ち。高い建物の後ろに時に視線から去る半月はまた見えるようになるときを待ち焦がれて、足を急ぐ。風は激しくて、ドレスとマントを翻されている。この自然の一部は私の中にもある、私でもある。ネイサンでも。ガブリエルでも。二人の坂は今同じように穏やかな半月に照らされているのだろうか。
半月。Half Moon.
自然と繋がりを失いかけてるハーフの人間。