Асами
物語をざっと読んで、深く考えないでいた。急ぎ足でその世界を歩き、まして走りながら、簡単に感じ取れる物事にだけ気がついていた。
でもネイサンの物語に戻ってから、少しずつそれは変わっていったでしょう。
一昨日この日記に書いたノートを読み直していたとき、ネイサンと歩いていたころの感情は文字から溢れ、どれほど敏感でどれほどその世界に心を許していたか、思い出した。
朝視よ、また旅行しよう。
浅い水面だけを見て、浅瀬ばっかり歩いてはいけない。朝視という人間である限り。
その気持ちに完全に目覚めたのはボブに再会したときだった。
天窓からの明かりだけで照らされているぼんやりとした部屋。非常に寒くて、少しだらしない印象のある台所。芸術の人によくある特徴。ボブの家はその持ち主が芸術に専念していることを朝視に述べていた。
イーゼルにあった静物画を見て ~ 「殺す」って厳しい言葉にそぐわない懇願するような抑揚だったので、ボブはきっと構わないだろうと、思って ~ ネイサンと一緒に隣の部屋へ移った。ボブは背中を丸めて、ソースパンを混ぜている。穏やかな声で話しかけてくる。(きっと絵を見たことを知っていたけれど)
その部屋は寒かった。それにしても心が暖かい。ネイサンは笑っている。何年ぶりに彼の素直な笑顔を目にしたのだろう?
ネイサンはいつもまず相手の目を覗き込む。ボブの場合は第一に気づいたのは彼の背中、スプーンから床に垂れる滴。彼の骨ばった手と細い足首。片足に履いた赤い靴下。後何もかも理解してくれることに。
ボブはハンターじゃない。であるはずはない。
二キータの後珍しく親切にしてくれた人。白い魔使いとはいえ、委員会がしたことはいやらしいと言ってくれる。マーカスの息子に手助けをする。何の見返りを期待しないで。むしろ自分の運命を危険にさらして助けてくれる。その時ボブは淡いだろうけど、フランスへ逃げ切れる希望を持っていたと、朝視に見えた。
彼はネイサンが美しいと教えてくれた。おぞましいものであるようにずっと扱われてきたネイサンをそんな目で見たのは家族以外彼だけ。
朝視は、「あなたは悪くない」とアランが言っているように聞こえた。
ボブはアランに似てる。ネイサンもきっと気づいているに違いない。だってボブの目を見ているから。
しわのあった陰気な顔を眺めていて、頬を緩めている。
その目は美しい。描きたい。そうしているあなとを。ひもじそうで、ただ若くて。ただ若くて。
朝視はネイサンに従って、ボブの家を出て行こうとしたとき、振り向いた。「ありがとう、ボブ」ネイサンの変わりに伝えたかったの。
ボブの絵は私の心に残る。ネイサンの心にもずっと。
Paul Cezanne (1839~1906) フランスの画家、静物画

でもネイサンの物語に戻ってから、少しずつそれは変わっていったでしょう。
一昨日この日記に書いたノートを読み直していたとき、ネイサンと歩いていたころの感情は文字から溢れ、どれほど敏感でどれほどその世界に心を許していたか、思い出した。
朝視よ、また旅行しよう。
浅い水面だけを見て、浅瀬ばっかり歩いてはいけない。朝視という人間である限り。
その気持ちに完全に目覚めたのはボブに再会したときだった。
天窓からの明かりだけで照らされているぼんやりとした部屋。非常に寒くて、少しだらしない印象のある台所。芸術の人によくある特徴。ボブの家はその持ち主が芸術に専念していることを朝視に述べていた。
イーゼルにあった静物画を見て ~ 「殺す」って厳しい言葉にそぐわない懇願するような抑揚だったので、ボブはきっと構わないだろうと、思って ~ ネイサンと一緒に隣の部屋へ移った。ボブは背中を丸めて、ソースパンを混ぜている。穏やかな声で話しかけてくる。(きっと絵を見たことを知っていたけれど)
その部屋は寒かった。それにしても心が暖かい。ネイサンは笑っている。何年ぶりに彼の素直な笑顔を目にしたのだろう?
ネイサンはいつもまず相手の目を覗き込む。ボブの場合は第一に気づいたのは彼の背中、スプーンから床に垂れる滴。彼の骨ばった手と細い足首。片足に履いた赤い靴下。後何もかも理解してくれることに。
ボブはハンターじゃない。であるはずはない。
二キータの後珍しく親切にしてくれた人。白い魔使いとはいえ、委員会がしたことはいやらしいと言ってくれる。マーカスの息子に手助けをする。何の見返りを期待しないで。むしろ自分の運命を危険にさらして助けてくれる。その時ボブは淡いだろうけど、フランスへ逃げ切れる希望を持っていたと、朝視に見えた。
彼はネイサンが美しいと教えてくれた。おぞましいものであるようにずっと扱われてきたネイサンをそんな目で見たのは家族以外彼だけ。
朝視は、「あなたは悪くない」とアランが言っているように聞こえた。
ボブはアランに似てる。ネイサンもきっと気づいているに違いない。だってボブの目を見ているから。
しわのあった陰気な顔を眺めていて、頬を緩めている。
その目は美しい。描きたい。そうしているあなとを。ひもじそうで、ただ若くて。ただ若くて。
朝視はネイサンに従って、ボブの家を出て行こうとしたとき、振り向いた。「ありがとう、ボブ」ネイサンの変わりに伝えたかったの。
ボブの絵は私の心に残る。ネイサンの心にもずっと。
Paul Cezanne (1839~1906) フランスの画家、静物画
